古い民家のイメージといえば、汚い 暗い 寒いが挙げられるが、 これからの諸条件から現代のライフスタイルに対応できなくなり、いとも簡単に壊し、 新築をと思っている人が大半だと思うが、建築家が慎重に調査し、診断した上で、 適切な処方を施せば、新しい現代住宅に生まれ変わる民家がたくさんある。
わが国の代表的な事例を挙げると、倉敷のアイビースクエアは、 明治に建てられた紡織工場を、ホテルとして蘇生された成功例といえる。
「蘇生」は、懐古趣味から、あるいは古材再利用の観点からみなされるのではなく、 また古くなった民家を元通りに修理復元するものではない。
もとある材料や空間を最大限に利用しながらつくりかえて、新しい現代のライフスタイルに適応する 豊かな現代住宅として蘇らせようとするものである。
文化財の保存であれば、人間は手を加えることも、住まいとすることも許されず、 多くは資料館として残るだけで、生を感じることがない。これでは死んでいるのと同じである。
民家はいわばものではなく生き物である。
「蘇生」が魅力的なのは、古い建物に新しい生命が、吹き込まれたからに他ならない。
今まで、汚い 暗い 寒いと思いながら住んでいた住宅が、我々が手を加えることにより、 現代のライフスタイルに合う、またそれ以上の空間が出来、 他には真似の出来ない価値のあるものへと変化する。